一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

田邉 博智(松本工業高校2年・松本市)

LinkIcon前へ‥‥次へLinkIcon

「折り鶴への願い」
アメリカで出会った人に、私は小さな折り鶴を渡した。私たち日本人は願いを込めて鶴を折る。それを説明し、その方が折り鶴に託したい願いを聞いた。
 ニューヨークでは、アン・バンハインさん(62)に渡した。9・11米中枢同時テロで消防士だった夫を亡くし、その経験を伝えるためにボランティアでガイドをしている方だ。アンさんは「私には孫がいるの。その子が大きくなるころには世界から戦争がなくなっていてほしい。だから私は平和を願います」と語ってくれた。
9・11で崩壊した世界貿易センター跡地はモニュメントが造られ、公園のようになっている。仕事の合間に休憩していた男性は、奥さんががんの治療中だという。「早くよくなってほしい」という願いを話してくれた。
コネチカット州の看護の専門学校に通うペイジ・ネストさん(19)は、アルバイトのためワシントンにいた。彼女の願いは「アメリカの学費を下げてほしい」。アメリカの学業について教えてくれた。学生が学費の支払いに苦労しているという話は、鶴の取材以外の場でも聞いた。
私は折り鶴に、取材相手との距離を縮めたいという願いを込めていた。アメリカにはないこの文化をどの人も真剣に受け止めてくれ、アメリカ人の寛大な心に触れることができた。皆さんの願いが叶うことを心から願う。

「人種や文化が混ざる国」
私は、以前から思っていた。「アメリカは、ルーツや宗教などが異なる人がいるのに、どうやって仲良くしているのだろう」。その疑問を、アメリカで率直に尋ねた。2人の答えが印象に残った。
1人目はジェイソン・ゲスキさんだ。イリノイ州選出で共和党の上院議員事務所で、日米関係を中心に外交や安全保障を担当している。ゲスキさんは料理店にたとえた。「ここから2ブロック先に、いろいろな国の料理店が集まっている場所がある。その料理店の人たちは対立をせず、仲よくやっている。アメリカは移民の国。その人たちがいろいろな文化を持ってきて、それらが混ざり合うことでうまく成り立っている」と答えてくれた。
メトロポリタン美術館で取材した大学生のセバスチャン・トレスさんの話にも、料理店が登場した。「アメリカには昔からさまざまな人がいて、自分以外にいろいろな人がいるのを知っている。経済面だとフランス人がフランス料理店を経営したり、ドイツ人がドイツ料理店を経営したりすることでアメリカの経済が成り立っている。そんな風に仲良くしているよ」。そして最後に、「僕は、いろいろな文化が混ざり合っていくのは、とても面白いと思う」と言った。
世界には数え切れないほどの文化がある。アメリカだけでもかなりの数があるに違いない。異なる文化の存在を認め合い、生活面でも経済面でも文化と文化が混ざり合ってもう一つの文化が成り立っていく。そうしてみんなで仲良くしている。とてもすてきな国だと思った。

LinkIcon前へ‥‥次へLinkIcon