一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

小林 晃大(上田高校2年・小諸市)

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「命の重みと平和への願い」
 「彼は素晴らしいことをした」。オバマ米大統領の広島訪問について、ワシントンで取材した60代の男性はこう評価した。日米関係という外交面を理由に挙げた。取材したほか数人も、同じように肯定的な意見だった。広島訪問に対し、米国では「謝罪するのか」といった批判、懸念があると思っていただけに、意外でもあった。
 原爆投下によって犠牲になった20万もの命。その一人一人にさまざまな人間関係があっただろう。同じように、一瞬にして多くの犠牲を出した9・11米中枢同時多発テロの遺族アン・バンハインさんは言う。「たとえ1人の犠牲でも、その人は誰かの大切な人」。突然、大切な人を失う気持ちは計り知れない。そして、彼らは誰よりも平和を望んでいるはずだ。
 国立航空宇宙博物館では、広島に原爆を投下したB29爆撃機を見た。半世紀以上前のものとは思えない迫力で、言葉を失った。その開発には原爆そのもの以上に費用がかかっていたという。第2次世界大戦中、こうした航空機によって多くの人が亡くなった。その一方で、航空技術は大きく発達した。私たちが遠い海の向こうに足を踏み入れることができるのも、この時の技術の発達があったからに違いない。皮肉だ。だからこそ、多くの犠牲を忘れてはいけないと思った。
 アンさんは「次の世代に伝えなければならない」とも言っていた。教科書の数行だけで知った気にならず、一つ一つの命、人生にスポットライトを当ててみると、命の重みが分かってくる。過去を学び、未来を考え、それを伝えることが大切だ。そうすることで、平和の光が見えてくるはずだ。


「求められるおもてなしを」
「いらっしゃいませ」。はつらつとした声が店内に飛び交う。日本の店ではよくある光景だ。
米国での取材で、飲食店や土産店にも足を踏み入れた。品ぞろえや内装はすてきな店ばかりだったが、何か違和感を覚えた。店員の接客だ。大声で笑い話をする中年の女性店員、会計時もずっと下を向き無愛想な若い店員、さらにはおつりが合わない、など。日本では考えられない光景に、困惑した。
私は以前から接客に興味があった。よい接客とは、店員が客を立てることで成り立つと思っていた。日本にしろ米国にしろ,接客は店によって異なり、単純に日米で比較はできない。だが、自分の思い描いていた理想とは、かけ離れていた。
一方で、店を出る際、「Thank you」「Have a nice day」などと、独特のフレンドリーさで声を掛けられた。決して悪い気はしなかったし、むしろまた来たいとさえ思った。
東京オリンピック招致で日本から世界に発信された言葉「おもてなし」。グローバル化も進み、誰もが外国人訪問者と関わる機会は増える。価値観は人それぞれ違う。TPO(時・場所・場合)で絶妙な距離感を保ちながら「おもてなし」をすることが大事だと思う。

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