一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

中村 真美子(長野高校2年・長野市)

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「異なる立場を理解する」
世界平和を考える上で、私は真っ先に国連を思い浮かべる。だが、現実の世界はテロや貧困などの問題が山積みだ。国連が存在する意義は何か。5カ国が拒否権を持つ安全保障理事会は時代に合っていないのではないか。以前から抱いていた疑問を、アメリカで出会った人に投げかけた。
「安全保障理事会の常任理事国に強大な力が集中していると思うか」。この問いに、夫と旅行中というドイツ人で教師のジュリアさん(29)は「イエス」と答えた。「でも、変える必要はない。長期的に問題を解決するためには、常任理事国は固定しておくべきだ」と続けた。思いもしなかった答えだった。しかも常任理事国でないドイツの人だ。一方で明快な説明に納得もし、自分の考えが揺らいだ。
国連の存在意義については、大学で経済学を教えているというアメリカ人男性(65)をはじめ複数の人が「世界の問題を議論し、解決しようとする唯一の機関だ」という点を挙げた。
国連での議論が全てを解決できるわけではない。けれど、国連が発信することで平和への機運が生まれる。よりどころだと感じた。
予想外だったのは、アメリカ人は取材した8人のうち5人が、国連について「よく知らない」と答えたことだ。ニューヨークで聞いたエリンさん(60)は「ほとんどのアメリカ人は国連について十分な情報を与えられていない」。共同通信社ニューヨーク支局長の尾崎元さんも「アメリカで国連のニュースはめったに流れない。国民の関心は低い」と話した。
共同通信社ワシントン支局次長の坂本泰幸さんの言葉が心に残る。「時代の変化に応じて常任理事国を変えることも必要だと思う。だが、置かれた状況により加盟各国の考えが異なるため、難しいだろう」。異なる立場、異なる意見があるからこそ、国連の役割は難しく、かけがえがない。世界平和のために私たちができることも、まずは思い込みをなくし、異なる立場があることを知り、尊重することだと思った。

「国境を越える食べ物」
アメリカの食べ物と言えば、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ…。これは私が抱いていた印象だ。実際、今回のアメリカ滞在中もこれらを食べた。しかし、こうしたジャンクフードには限りがある。アメリカの人は普段、どんな物を食べているのだろうか。アメリカでの食事について取材した。
ワシントンで会った日本政治アナリストのトバイアス・ハリスさんは「アメリカの食はさまざまな国の影響を受けている」と語った。確かに、最近は食べ物が国境を越えて融合していると感じる。カリフォルニアロールは日本のすしがアメリカ風にアレンジされたものだ。「カリフォルニアロールは日本食か」と米国人に尋ねた。ほとんどの人は「違う」と答えたが、中には「日本食だ」と答えた人もいた。
日本食についても取材した。ロンドンから来た観光客の夫婦は、夫のスティーブさん(53)が「すしが好き」。妻のサラさん(55)は「すしは好きではない。スーパーで売っている薫製された魚のすしは好き」と話した。薫製魚のすしとは、新たなアレンジだ。日本食もそうして融合していると感じた。
世界では、日々食べ物の国境がなくなりつつある。国境を越えた食べ物は、時にその土地の味覚に合わせて改良され、生き残っていく。

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