一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

堀 由依(長野日大高校1年・長野市)

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「小さな行動が持つ力」
2001年9月11日、ニューヨークのWTCで同時多発テロが起きた。343人の消防士を含む約3千人もの人が亡くなった。
今回、私は9・11記念博物館近くで、スーツ姿の男性に「9・11のテロについてどう思うか」と尋ねた。答えは「できれば何も話したくない」。彼の中で言葉にできないほどのつらい記憶として残っていることを瞬時に理解した。私は謝罪の言葉だけ言って去った。
私が質問した人の半数は彼のような反応をした。冒頭の数字だけでは伝わらない事件のむごさを感じた。
一方、9・11で消防士の夫を亡くしたアン・バンハインさんは、事件から15年たった今の胸の内を語ってくれた。私は最後に「どのように日常を取り戻していったのか」と尋ねた。アンさんは「とにかく助け合った」と言った。ニューヨークには、世界中からの支援の手が差し伸べられ。彼女にもたくさんのメッセージが届いた。「それら全てが心の支えとなり、元気づけられた」という。
記念博物館には、灰をかぶった衣類や焼けた靴、壊れた眼鏡といった物が並び、テロの恐ろしさを伝えている。とともに、各地から寄せられた多数のメッセージも展示されていた。それらは何か不思議なパワーを感じさせた。
日本でも、東日本大震災のような甚大な災害が今後も十分起こり得る。私たちは、現地に出向くことはできなくてもメッセージを送ることはできる。ちっぽけなことのようでも、必ず被災者の力になるのだ。取材で聞いたアメリカの人の声とともに、1人の小さな行動が大きな力を持っていることを伝えたい。

「『おもてなし』は国境を越えた心持ち」
「おもてなし」は、日本人特有の心持ちだと思っていた。しかし今回、必ずしもそうではないと気付かされた。
行きの飛行機内では、日本人のキャビンアテンダント(CA)のおもてなしに触れた。
配られた機内食の弁当が滑り落ちそうになった。前席の背もたれに取り付けられた私のテーブルが、なぜか前方に傾いていたのだ。手で押さえて食べようとしたところ、あるCAがおしぼりシートを弁当の下に敷いてくれた。本来の用途ではないが、見事にストッパーの役割を果たし、手で押さえることなく食べることができた。
柔軟に機転を利かせて、あえてする必要のないはずのことをしてくれた。「日本人だなあ」としみじみ感じた。
一方、アメリカ滞在中のホテルでも、心に残る対応を受けた。
誕生日の友達に送ろうと、私はアメリカでバースデーカードを買った。ホテルのフロントで送り方を尋ねると、切手が買える店への行き方を教えてくれた。切手を手に入れた私は「これでカードが送れる」と、またフロントに行った。
だが、女性スタッフが「封筒に入れないと送れない」と言う。カードには封筒が付いていなかった。私はうろたえた。
体格のいい男性スタッフがやってきた。「この白い紙で封筒を作ったらどうだ」。そういう言うだけでなく、その場で即席の封筒を作ってくれた。こうして私はバースデーカードを出すことができた。
「アメリカ人はがさつだ」というイメージはないだろうか。おもてなしの心を持つのは、日本人だけではない。国境を超えた心持ちなのだ。あのバースデーカードが、おもてなしの心と共に友達に届くことを願っている。

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