一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

金子 詩奈(阿智中学2年・阿智村)

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「安全な食べ物を」
 濃い。ヤンキースタジアムでの夕食に、長蛇の列ができていた屋台のチーズホットドックを食べた。恐ろしいほどにチーズが濃い。「アメリカらしいな」と思ったのと同時に「体に悪そう」と思った。
私はスタジアムのフードコートで、来場者に「普段食品を選ぶ時に何を基準に選ぶか」と聞いた。「ヘルシー」「味」「作るのが簡単」という意見が多かった。「安全・安心」は少なかった。なぜだろう。
共同通信社ニューヨーク支局長の尾崎元さんは「米国の食の歴史はまだ浅い。植民地時代を経て、おなかいっぱいになることが食の目的になっていると思う」と解説してくれた。
 米国人はよく食べるイメージがある。だから、食についてこだわりがあるだろうと予想していた。現地で食べた食事はこうだ。口に入らないほどの大きさのハンバーガー。食べきれない量のパスタ。ジュースの色と甘さにも驚いた。色、量、味などにおいて疑問を感じた。
有機については、どう考えているのだろうか。メトロポリタン美術館で、マリリン・フランクさん(63)に取材した。マリリンさんの息子は菜食主義で、有機栽培の食べ物しか食べないという。「卵は2ドル程度で買えるのに、息子は12ドルで有機の卵を買っている」とマリリンさん。それに対し、マリリンさんは「クレイジー(ばかげている)」と繰り返していた。
「どうしたら有機野菜が選ばれるようになると思うか」と聞くと、「もっと値段が安くなる」「幼いころから食べる物の質を考えるような教育をする」ことを挙げた。
私は有機野菜を食べて育った。安全性もおいしさも知っている。だから大事だと思える。でも、たくさん食べる米国では、値段の高い有機の物を買う人は少ないのかもしれない。
日本では、生産者情報が見られる食品も多い。無添加食品もよく見かける。毎日の食事が自分たちの身体にどう関係するか、それが未来の子どもたちにどう影響するか知るべきだと思う。安全であること、健康的であること、さらには和食の良さを海外にもっと発信していきたいと思った。それが世界の安全な食生活、健康につながるのではないかと思う。

「自由とは」
 米国には自由の女神像が2種類ある。一つはスタチュー・オブ・リバティー、ニューヨークにあるあの有名な自由の女神像だ。もう一つはスタチュー・オブ・フリーダム。ワシントンの連邦議会議事堂の上に建てられている像だ。リバティーもフリーダムも日本語訳は「自由」だ。この日案内してくれたガイドの方によると、リバティーは勝ち取った自由、フリーダムは生まれながらにして持っている自由の意味がある。
 報道の博物館「ニュージアム」で、独立戦争での取材活動を紹介する映像を見た時、「米国は当時、テロリストだった」という説明を聞いた。衝撃的だった。独立戦争時代、米国側からすれば英国は強大だった。力を持たない反乱者が英国に勝つのはつらく困難な道のりだった。しかしそれに勝ち、リバティーを得た。
 フリーダムは、人権について表している。アメリカには白人も黒人もキリスト教徒も同性愛者もいる。その中で差別も生まれただろうし、尊重する気持ちも生まれた。9・11米中枢同時多発テロでご主人を亡くしたアン・バンハインさんは「みんな違うことがいい」と言った。私は、互いを認め、尊重し合えばテロや戦争がなくなるかもしれない、と思った。
 この取材旅行で「自由」のイメージが変わった。「開放感」とか「気まま」のようなイメージを持っていた。でも実は、人々の葛藤の歴史の上に成り立ち、支配されていた歴史から勝ち取った自由と、生まれながらにして持っている人権の尊重であることを知った。今自由であることがどれだけ尊いことか。日本では当たり前のように過ごしているが、世界には不自由な暮らしをしている人がまだたくさんいる。そのために自分たちに何ができるか考えるべきではないだろうか。そう考えさせられた取材旅行になった。

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