一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

小川 真(第四中学3年・上田市)

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「心の中の差別」
 アメリカで7月、警察官が黒人男性を射殺する事件、黒人が警察官を銃撃する事件が起きた。そのニュースに衝撃を受け、「人種差別をなくすには何が必要か」という問いをアメリカでぶつけた。
 共同通信社ニューヨーク支局長の尾崎元さんの答えは「時間」だった。「1862年に奴隷解放宣言が出されてから、公民権法制定、黒人大統領の就任などがあった。黒人の地位は時代とともに確実に向上している。難しい問題だが、時間とともに差別は減っていくだろう」と語った。
 この答えに共感する一方で、疑問も残った。どんなに社会制度が整備されたとしても、差別は人の心にあるからだ。一人一人の心が変わらなければ、差別の本当の解決には至らないのではないか。人種差別に限らず、心の中で人を一度も差別したことがないという人がいるだろうか。
 アメリカで最後の取材となったジョン・ブレアさん(65)は「教育」を挙げた。「差別の意識は幼いころから芽生える。自分と違う人たちについて、正しい情報を与えることが必要だ」との理由だった。取材を終え、ノートに私へのメッセージを書いてもらった。「自分にしてもらいたいことを、ほかの人にもしなさい」とあった。聖書の言葉だと思い当たった。一人一人の心の一新こそが、社会を変える原動力だ。

「選挙に向き合う」
 ニューヨークで大統領選挙に対するアメリカ人の考えを取材した。印象に残る意見に出合った。「私の友人に、『トランプ氏には反対でも、共和党に登録しているからトランプ氏に投票する』と言う人がいる。でも、自分の信念に基づいて投票すべきだ」。ニューヨークの9・11トリビュートセンターで案内をしてくれたアン・バンハインさんの言葉だ。
 アメリカでは、自分の考えに合った政党に登録をして、その政党の候補者を支援、支持する人が多い。候補者と政党の考えが一致していれば、この方法に問題はない。しかし今年は違う。大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏の主張は、必ずしも党の考えと一致していない。共和党支持者にとっては、これまでのような理由で選ぶのが難しくなっている。
 民主党が強いというニューヨークでの取材だったため、共和党支持者の声はあまり聞けなかった。ただ、多くの人が迷っているのは分かった。その中で、アンさんのように支持政党にこだわらず、個人として選ぶ方法は、今回の選挙では意義のある選択肢だと思う。
 私は、米国民が自分にとって、アメリカにとって、そして世界にとって誰が大統領にふさわしいのか、自分の考えと意思で責任を持って選んでほしいと願う。そこに民主主義の意味があると思うし、今回の選挙で問われていることだと思う。
 日本では、選挙権年齢が引き下げられた。近い将来に有権者となる自分も、選挙の意味をよく考えて投票所に向かうべきだと感じた。

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