滞在日記 8/4同行記者の報告
アメリカ取材、終盤に
いま全世界が「テロ」に直面しています。今日は、2001年9月の米中枢同時テロで崩壊した世界貿易センタービルの跡地に近い「9・11トリビュートセンター」、跡地の地下にある「9・11記念博物館」を訪ねました。トリビュートセンターでは、消防士の夫を亡くしたアン・バンハインさんが話をしてくださり、また跡地の案内もしてくださいました。「人の立場も考えも肌も違っていていい。違う人を尊重することが大切だ。憎む相手を殺すため、自分の命を落とすことがあってはいけない」など、穏やかだけれど重いメッセージをたくさん受け取りました。
トリビュートセンターには、広島で被爆し、鶴を折り続けた佐々木禎子さんの折り鶴が展示されています。禎子さんの家族が寄贈したものです。跡地周辺には新しい世界貿易センターが建設されるなど、恐らく風景は様変わりしています。その中で、崩壊したツインタワーがあった場所は、建物を建てずにメモリアル施設になっています。深く掘って、地上レベルから少しずつ水が流れ込んでる構造です。底が見えないこと、水が少しずつ流れることにも深い意味がありました。周りには、犠牲者の名前が刻まれています。今日が誕生日の人の名前には、白い花が添えられていました。
昼食には、共同通信社のニューヨーク支局長が来てくださいました。昼食後はそのまま同支局を訪ね、支局長の話を聞きました。ここでも、学生記者は自分が取材しているテーマに関する質問を次々と支局長にぶつけていました。
夕方は、ヤンキースタジアムでヤンキース対メッツの「地下鉄対決」を観戦。広大なスタジアム観客席は徐々に埋まっていきました。応援は日本のような鳴り物を使いません。メッツが得点を重ねるごとに場内の歓声が大きくなり、熱気に包まれました。学生記者は、ショップで買った帽子を早速かぶったり、ホットドッグやピザを食べたりしながら観戦しました。
朝、バッテリーパークにて。右後方に小さく見えるのが自由の女神です消防士の夫を亡くしたアン・バンハインさんが、ツインタワー跡地にできたメモリアル施設を案内してくれました感極まって泣いていると、バンハインさんがハグしてくれました各自のテーマごとの取材も進めています
中学生・高校生派遣感想
花立 ひなた(文化学園長野中学3年・長野市) |
米国で銃はどのような存在なのかを取材している。ワシントンにあるNEWSEUMを訪れていたパトリシアさんは「銃を持っている人にとって、自分を、生活を守ることだ」と答えた。米国の人々から銃をなくすことは現実的ではなさそうだ。残り1日で、少しでも多くの米国人の意見を聞きたい。
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松島 圭佑(中野平中学2年・中野市) |
紙とインターネットの新聞について取材している。インタビューの結果、ほとんどの人が新聞を読んでおり、紙ではなくインターネットで読んでいる人が多い。共同通信社のニューヨーク支局長には、紙とインターネットそれぞれの利点などを聞いた。どちらの新聞を選ぶかについて、今の自分は「自分に合った新聞を選ぶことが大切」と考えている。
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小川 真(第四中学3年・上田市) |
米大統領選について、アメリカ人の考えを聞いている。「私の友人に『トランプには反対だけれど、共和党員だからトランプに投票する』という人がいる。それは間違っている」という意見に共感した。組織を理由にせず、自分、アメリカ、世界にとってどの大統領がいいのか、自分を持って投票することに民主主義の意義があるのではないか。
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萩原 日和(御代田中学3年・御代田町) |
9・11記念館に行った。その日の8時からの写真だった。笑顔あふれる写真ばかりで、今からたくさんの人の未来を変えてしまうように思えなかった。いつ何が起こるか分からない。〝普通〟が幸せだと気付かされた。
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矢口 駿太郎(松本秀峰中学2年・松本市) |
ヤンキースタジアムなどで、若い世代を中心に男女8人に、オリンピックについてインタビューした。日本のオリンピック選手を知っている人は全くいなかった。野球場で聞いたのに、オリンピックで注目している競技はサッカーや陸上が多かった。ほかにもテニス、卓球を挙げる人もいた。
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小林 思音(豊科北中学3年・安曇野市) |
「新しく決まる大統領に望むことは何か」を米国人に聞いている。みんな自分の意見をすぐに答えてくれる。テロ対策、生活をよりよくすること、貧富の差をなくすこと…。自分の国のことを真面目に考えて答えてくれた。そして、若年層、高齢層といった年代で割れることはなく、全員違う課題を挙げていたのが印象的でした。
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山本 優菜(仁科台中学2年・大町市) |
日本のことを知っているかを質問している。これまでに18人に聞いた。日本について知らない人がいるとは思っていたが、予想以上に知らない人が多い。メディアなどで紹介されている日本ブームとは異なる、十人十色の考え方を感じることができた。
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實吉 恵(諏訪南中学2年・諏訪市) |
動物と人間の共生について調べている。質問したほとんどの人が「野生のハリネズミを見たことがある」と答える。ワシントンDCでは、連邦議事堂前の木々、ホワイトハウス前の公園にもリスがたくさんいた。私が見た米国は日本と比べて緑が豊かで、道路脇にも森が広がっていた。日本は人が暮らす周辺に木々が少なく、動物と関わる機会が少ないと考えている。
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原 総吾(飯田西中学3年・飯田市) |
女性の地位向上についてインタビューしている。アメリカでは、性別に関係なく、チャンスが与えられていると思う。パイロットなどの職にも女性が増えていると聞いた。日本でも、性別に関係なく平等にチャンスが与えられるといい、と思う。
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金子 詩奈(阿智中学2年・阿智村) |
私は、「先入観」にかなり翻弄(ほんろう)された。米国人はよく食べるイメージがある。だから、食について関心が高いと思っていた。しかし、「食事で大切にしていること」を「味」「フレーバー(風味)」などという人が目立ち、「栄養バランス」や「安全」という答えが今のところほとんどない。取材を通して、食にはあまり執着がないという印象を受けた。先入観を一つ一つほどいていくのが、アメリカについて理解していくことだと思う。
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堀 由依(長野日大高校1年・長野市) |
9・11について遺族の方からお話をお聞きした。彼女は消防士の夫を亡くした後、家族や友人の支え、世界中から寄せられたメッセージに元気づけられ、乗り越えることができたと言っていた。9・11記念博物館には、焼けた靴や眼鏡、灰をかぶった衣類などとともに、多数のメッセージが展示されていた。私たちは、遠い被災地に出向くことはできなくても、必ず被災者のために何かできることはあると感じた。
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中村 真美子(長野高校2年・長野市) |
アメリカ人は国連に関心があるのか。国連常任理事国が持つ権利について取材していると、ほとんどの人が「よく分からない」と答える。予想外だった。共同通信社ニューヨーク支局長は「国連のニュースはめったに流れない。国民は関心がないと感じる」と話した。世界の中心地とも言えるアメリカでも、やはり自国の政治より関心のあるものはないのだろうか。
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小林 晃大(上田高校2年・小諸市) |
「命」。「テロで失う最も大きなものは何か」という問い掛けに、9・11で消防士の夫を失ったアンさんはこう答えた。教科書では数行で扱われる戦争やテロ。犠牲者ひとりひとりにスポットを当ててみると、命の重みが分かってくる。アンさんが言うように、たとえ嫌いな人がいても、その全てを認めることができたら、平和な世の中になるのかもしれない。
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永井 優(野沢北高校1年・佐久市) |
「アメリカでは経済格差によって、病気になった時に受けられる治療にも格差が出る」。80代のジャーナリストのアメリカ人男性がこう言っていた。医療は人の命に関わることなので、貧富の差があっても平等に治療を受けられる方法を考えていくべきだ。
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田邉 博智(松本工業高校2年・松本市) |
私は、取材で出会った人に、折り鶴を一つ贈っている。日本では願いを込める、と説明し、取材相手が鶴に何を願うか聞く。世界平和、学費が下がること、家族の病気が治るように…。アメリカの今が見える願い、どの国の人にも通じる願いがある。そこから得た自分の考えを書きたい。
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佐藤 澪(豊科高校2年・白馬村) |
英語を母語としない人を中心にインタビューした。英語の学習法を聞く目的だったが、語学力の高さに驚いた。母語と英語の2カ国語は当たり前、多い人では5カ国語も話せる。英語を話せるようになるには、多くの人が「その国に浸る」「実際に旅をする」と教えてくれた。「島国だから、使う機会がないから、ほかの国の人より英語は不得意」という言い訳は通用しない。「テストに出る英語」は「話す英語」にはあまり役立たないと痛感した。日本語英語教育、日本人の心の持ち方は、変わるべきではないだろうか。
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堀 尚裕(長野工業高専1年・南木曽町) |
これまでの取材で、LGBTに対する考え方には二通りあった。一つは「彼らとの違いは大きいけれど、彼らの生活様式を尊重すべきだ」という考え。もう一つは「彼らも私たちも、ただ大好きな人を愛しているだけで、違いはない」という考えだ。もし反対する人がいれば、その意見を聞きたい。
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小林 愛実(諏訪清陵高校2年・茅野市) |
9・11トリビュートセンターへ行った。事故で旦那さんを亡くしたアンさんにお世話になった。当時の様子、今の気持ちや生活などについて聞いた。淡々とした口調とは裏腹に、動きは少しそらし、指輪に手をやる行動に心を動かされた。アンさんが繰り返し言った「敵のために自分の命を犠牲にしてはいけない」という言葉も、よく考えなければいけないと思った。
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中川 泰成(伊那北高校2年・伊那市) |
カウンセリングに対する考え方を聞いている。ささいな理由でもカウンセリングを受ける人が目立つ。取材した7人中6人がカウンセリングを受けた経験があった。ポジティブなイメージを持ち、また受診は一般的なことであると考えている。
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細田 智香(伊那西高校2年・駒ヶ根市) |
アメリカで過ごした4日間、車いすに乗っている人を多く見かけた。ワシントンで日本で働いていたアメリカ人にインタビューした。彼は「日本に比べてバリアフリーは進んでいる。加えて、アメリカでは障害を持つ人をみんなが受け入れているため、彼らも障害を重荷に感じずに生活できる」と話した。バリアフリーという環境の良さも、障害がある人に対するアメリカ人の理解がるからだと思う。
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