一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

武田 朋己(松本秀峰中等教育学校5年・安曇野市)

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<LGBT認め合える寛大さ>

 私にはゲイの友人がいる。彼に打ち明けられるまで、私はLGBT(性的少数者)について関心を持っていなかった。今回の取材では、アメリカ人や欧州からの観光客にLGBTについてどう思うか聞いてみた。
 インディアナ州に住むポールさんは「LGBTの人々は特別な存在ではなく、不平等な扱いをするべきではない。彼らに見合った法律や制度を整えるべきだ」という。同じような答えが多かった。
 LGBTの中で、同性愛に否定的だった人は宗教上の理由からだった。ミズーリ州のルイスさんは「私は聖書を信じている。だから同性愛は認められない」と答えた。聖書を解説した本を指さしながら「私の主張は全てここに書かれている」と説明してくれた。取材を通じ、アメリカ国内でも対極的な考えがあると感じた。
 米連邦最高裁は2015年に、法の下の平等を保障する合衆国憲法を根拠に同性婚を認める判決を出した。このように、日本でもLGBTを認める法律や制度を整えていくべきだと思う。
 取材中、ニューヨーク州のジェーンさんに「あなたの友達にLGBTは何人いるの?」と聞かれた。私の知るLGBTは前述の友人だけである。ジェーンさんの職場(IT関係)では、多くの社員がLGBTをオープンにしているそうだ。ジェーンさんは「私は呼吸をするように、LGBTを無意識で受け入れている」と続けた。
 私は日本の社会にもこのような寛大さが必要だと思う。「マジョリティー(多数者)」と「マイノリティー(少数者)」が互いに認め合える職場環境があること。アメリカのストロングポイントの一面を見たと実感した。


<過去を学び未来を想像する>

 歴史に「もしも」は存在しないと言われる。しかし、もしもアメリカが原爆を投下しなければ、エノラ・ゲイが歴史的な航空機として展示される事もなかった。もしも2001年の米中枢同時テロでワシントンDCが攻撃されていたとすれば、派遣中に見た景色はなかっただろう。実際に現地を訪問し、そのような感情がふつふつと湧き上がってきた。「もしも、こうなっていたら」という視点から、過去の歴史を想像してみる事は大切だと思う。
 私たちが歴史を学ぶとき、それらは既成事実として理路整然と語られる。それはあたかも起こるべくして起こったと言わんばかりに因果関係に基づいている。しかし、歴史はそう単純ではない。2016年のアメリカ大統領選挙で、トランプ氏が勝利した。選挙期間中、対立候補のクリントン氏が優勢と見られていたが、結果は違った。
 共同通信ニューヨーク支局の記者、本蔵一茂さんは「メディアもトランプ大統領が誕生するとは予想できなかった」と言う。当時は多くの国民がこの結果を予想できなかった。「まさか起きないだろう」という出来事が現実となったのだ。
 これは米中枢同時テロにも言える。9・11メモリアルミュージアムには「あの日の朝が、夫との永遠の別れとなった」「いつも通りに帰ってくると思っていた」と犠牲者遺族の言葉が残されていた。まさか飛行機がハイジャックされ、まさかワールドトレードセンターが攻撃されるとは誰一人として夢にも思わなかった。ある一瞬を境に日常が奪われたのだ。
 冒頭で「もしも」の視点から過去の歴史を想像する事は大切だと書いた。それは、現実とならなかった歴史を想像する事で、現実では考えられなかった未来の事象を想像する事が可能だと感じるからである。過去の歴史を学ぶだけではなく、過去から未来を想像していく事も大切にしていきたいと学生記者派遣を通じて強く思った。

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