一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

山口 樹稀  (赤穂高校2年・南箕輪村)

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「アメリカで垣間見えた『働くこと』」
 私は働くことについて、興味があった。派遣前学習会の取材体験から聞き続けた。「なぜ今の仕事をしているのか」。一つ、明確な答えが聞けたのは国連だった。私たちを案内してくれた職員の松浦梨菜さん(25)は中学生の時、世界各国の生活の格差を知ったことがきっかけだという。「私は日本で恵まれた環境で暮らしている。この感謝の気持ちをどう表そうかとずっと考えてきた」と話してくれた。
 アメリカの労働状況については共同通信社の記者の方々に話を聞くことができた。一つはアメリカ独自の労働文化があるということだ。ニューヨーク支局の記者さんによると、アメリカでは趣味やライフスタイルに合わせて仕事を選ぶのが普通で、転職を前提に働く人もいるという。例えば、アメリカの有力紙ニューヨークタイムズを目指す場合で考えると、初めは小さい会社、さらに転職して大きな会社と、腕を磨いていくという。このように、ステップアップのために転職する人も多く、雇用が非常に流動的であるといえる。
 このほか、産業の形態の変化もある。近年は工場などでの単純な作業がハイテク化して仕事の絶対数が減ってきている。また、グローバル企業が他国に工場を建て、安い労働力を使うことで、アメリカ人の仕事が減りつつある。その中で「アメリカファースト」を訴えたトランプ氏の政策が、労働者の心に強く感銘を与え、支持につながったのではないかとワシントン支局の記者さんは話してくれた。
 大学卒業かどうか、どのような仕事内容なのかなどを比べても、労働状況や収入に差はあるだろう。この差が親から子どもの世代にも広がれば、格差は広がり続けるのではないだろうか。


「日本と違う戦争の意識」
 国立航空宇宙博物館別館にはさまざまな飛行機が展示されている。戦争で使われた機体も数多い。第2次世界大戦で広島に原爆を落とした爆撃機「エノラ・ゲイ」もある。アメリカ人の戦争への意識を探ろうと、来館者に核兵器について考えを聞いた。
 父が空軍にいたという年配の男性と祖父が海兵隊だった26歳の男性に「核兵器は必要か」と問うと、2人とも「必要」と即答した。「核兵器はなくならないのか」の質問には、年配の男性が「そうとは思いたくない」と言ったのに対し、若者は「そう思う」と答え「核兵器がなくなっても、新しい兵器が出てくるだけ」と付け加えた。現実を肯定的に捉えているようだった。
 米国は第2次大戦後もベトナム戦争やイラク戦争などを経験している。戦争や軍事行動に対する市民の認識を共同通信の記者に聞くと、軍事行動の記事が新聞の1面に載ることは少なく、関心は低いという。ただ、戦争が始まると、大統領の支持率が跳ね上がるそうだ。72年間、戦争をしていない日本の意識とは、大きな差を感じた。 

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