一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

荻原 愛花  (松本蟻ケ崎高校3年・松本市)

LinkIcon前へ‥‥次へLinkIcon

「移民問題が抱えるジレンマ」
 「移民の国」といわれるアメリカで今、なぜ移民の制限が強化されようとしているのだろうか。取材した。
 自分たちも移民で現在、ニューヨークに住むポールさん(69)とロバートさん(75)は「きちんとした手続きをし、習慣や言語を学び、職に就き、納税をするという正しいやり方をすれば問題はない」と自身の経験を踏まえて語ってくれた。つまり、移民であってもアメリカ国民としての義務をしっかりと全うしていれば問題はないという考えだ。
 一方、国連職員の松枝研介さんからは「不法移民の増加で治安の悪化や雇用の圧迫など長期的な問題があるのは事実」という一つの背景も聞いた。不法移民の増加から考えると、移民制限が一概に悪いとは言いがたい部分もあるようだ。
 こういった移民問題について、全米日系市民協会の幹部のジョン・トベさん(56)は「アメリカの低賃金労働は移民が支えている傾向がある。移民がいなくなると、仕事が成り立たない場面が出てくる」と指摘した。共同通信の記者さんによると、不法移民の取り締まり強化で移民が減少し、カリフォルニア州の農家では労働力不足が深刻化しているという。また、トベさんは「不法移民の強制送還によって、親とアメリカで生まれた子が離ればなれになる問題も起こっている」と語った。
 私たちをガイドしてくれたサカモトさん(53)の話では、ニューヨークのタクシーの運転手は移民が多いという。移民なしでは社会が回っていかない状況があるようだ。
 取材を通して、移民問題についてさまざまな側面があることが分かった。この問題は多面的にとらえ、議論することが大切だと思った。


「社会と個人どちら優先」
 日本の国民皆保険のような制度がないアメリカでは、オバマ政権による医療保険制度改革(オバマケア)で多くの国民が保険に加入できるようになった。しかし最近、その廃止がトランプ大統領を中心に騒がれた。なぜなのか。オバマケアについて取材した。
 教師のロドニー・パークスさん(46)は「政策として十分ではないが、国民全体が保険を受けられる。オバマケアは必要」と語った。両親が共和党支持というキャサリン・ホールデンさん(17)は、家庭でもオバマケアが話題になるという。「自分たちが頑張って働いて保険料を払っているのに、一生懸命働かない人も同じ保険を受けられるのは不平等だ」と反対だった。
 議論の背景には、企業の負担増やこれまで保険料を払っていた人は額が高くなっただけという不満もあるようだ。さらに、多くの人が「アメリカの国民性に『自助努力』という考えがある」ことを口にした。アメリカ独立戦争以降に根付いた考えだそうだ。社会と個人の利益、そのどちらを優先させるか。非常に難しい問題だと感じた。 

LinkIcon前へ‥‥次へLinkIcon