一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

高力 那岐 (松本深志高校3年・松本市)

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〈仕方のない戦争はあるのか〉
「憎しみは何も解決しない」
そう言うのは9・11の遺族のアンさん。アンさんはこう語った。
「私が本当に言いたいことはテロリストたちは無実の人を犠牲にしたということです。アフガニスタンを含め、中東地域とアメリカの関わりについては長い歴史があります。だけど9・11を起こし、自分たちの選択によって無実の人を殺しました」
テロはとても卑劣だ。それは率直な感想だったが、しかし、私はそこでひとつ疑問を持った。その後米国が報復として行った戦争で中東地域の罪のない多くの人々が亡くなったこと、アンさんはその結果を望んでいたのだろうか。
「私はもちろん戦争のない世の中のほうがいいに決まっていると思います。しかし今の『テロとの戦い』というのは国と国との戦いではなく、国家とある特定の団体との戦いになっています。だからテロを防ぐために戦争はときには避けられないことがあります。それが現実です」
壁にはあの日亡くなったたくさんの人々の写真が飾られていた。これでもまだ一部で、犠牲者3025人全員の写真を展示すればとても収まらないという。しかしそこには亡くなったその数十倍ともいわれる中東の人々の写真は無かった。
果たして仕方のない戦争はあるのか。その思いを抱えながら帰国した。これから政治、社会についてもっと深く学びたいと強く感じた。

〈忘れられない光景〉
この旅で忘れられない光景がある。それはホワイトハウス前で一人、テントを張って核兵器廃絶を訴える女性の姿だった。彼女の名はコンセプション・ピショットさん。
「私は日本からやってきた高校生です」と話しかけると彼女は「ああ、日本。核はいけません。長崎、広島をもう二度と繰り返してはなりません」と繰り返し私に向けて言った。
彼女の片方の足の指は複雑に絡まり合っていた。テントに展示してある傷ついた女性の写真はピショットさん自身だという。それは彼女がこの活動を続けるにあたって暴行が加えられたということを示すものだった。しかし彼女はそれでもこの活動を34年間し続けた。
私は10ドル札を缶に入れて彼女に敬意を示した。あたりには人が集まってきて、彼女は言う。「未来はあなた方、そしてこどもたちに懸かっています」
核兵器をなくすためには一人一人が行動をすることだとアメリカン大学原爆展の館長は語っていた。それを強く感じた出来事だった。

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