一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

竹内 佑太 (上田高校2年・上田市)

LinkIcon前へ‥‥次へLinkIcon

〈人間に必要なのは対話〉
「核や戦争は断じてあってはならない。人間に必要なのは顔を合わせ互いを理解しようとする対話。今のあなたと私のようにね」。アメリカン大学の原爆展で涙を流しながら絵を見つめるユダヤ系女性フリーマンさん(85)が語ってくれた時、取材への一切の不安が消えた。
 米国取材を行う中で今米国や世界で起きている様々な問題に触れるうちにあるキーワードが浮かび上がった。「対話」だ。
 ミークス下院議員スタッフ、ビトル氏(40)は今だなくならない黒人差別について「経済的に見れば人種差別が非合理的なことは明らか。解決策は小さな、しかし沢山の対話だ。」と語った。
 夕食会ゲストの日系人記者は私たちが取材先で「JAP」と差別を受けた事に対し、「普通日本人はJAPと言われても黙っている。しかし、差別はいけないことだと伝え、対話しないことには何も始まらない」と述べた。
 アメリカに行ったからこそ気づけたこと、それは相手を見つめ、理解する努力をすること、「対話」の大切だった。性別、人種、世代、国境、これらを越えるため人間に必要なのは「対話」だ。それは日本や世界においても変わりはない。インターネットの普及により顔を合わせずとも会話ができる現代。今こそ人々は「対話」することを忘れずに生きる必要があるのではないだろうか。

〈二国の精神と共通点を見た〉
 アメリカと日本の精神の違いは何だろうか。
 連邦議会議事堂で米国誕生の映画を見た。力強くひたむきな開拓者たちの物語だ。当時の人々と同じく、その子孫である現代アメリカ人は、自分の国やルーツに誇りを持っている。さまざまな人たちで入り乱れる社会であるからこそ、自身に自信を持ち、個性を積極的にアピールできると思う。対して日本人は何においても平均を意識しすぎるのではないか。
 「日本人は繊細かつ完全主義で信頼できる。しかし、アメリカ人にあって日本人にないものはリスクだ。危険をかえりみず挑戦する心だ」。夕食会のゲストだった日系人記者が言った。米国は日本に比べ、世論の移り変わりが早いという。例えば、同性愛への理解の問題についてもアメリカは世界的に見て、より深い理解が広がっている。それもアメリカの国民性ゆえなのかもしれない。
 しかし、原爆展や9・11記念博物館を取材するうちに、二国の共通点も見えてきた。それは、非常時における団結力だ。2011年の東日本大震災では、日本人一人一人が他人のことを考え支え合い、配給トラックの前には静かに列を作り順番を待つ姿があった。9・11では、殉職した消防士たちをたたえ、街は星条旗にあふれたという。
 米国に行くことで今までとは異なった印象を持つ二国の精神と共通点を見ることができた。互いの国の性格や文化を取り入れて高め合っていける二国であってほしい。

LinkIcon前へ‥‥次へLinkIcon