一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

加賀田 穂 (信州大付属松本中学1年・松川町)

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〈教育格差は日米で問題〉
 日本では今、教育格差が問題になっている。親の経済状況や学歴が、進学に影響しているのだという。同じように格差社会といわれるアメリカでは、どうなのか。教育の現状について取材してみた。
ダレス空港で会ったスタムさんは「アメリカでは学歴に関係なく、最終的に富を得た人が成功者」という考えだった。だが、メトロポリタン美術館では「貧富の差は教育のレベルに比例する」と断言する来館者にも出会った。日米とも経済格差と教育格差は密接な関係にあるようだ。しかし、アメリカにはもっと違った事情もあった。共同通信ニューヨーク支局長の尾崎元さんによれば「アメリカでは人種の違いが教育に与える影響が大きい。白人に比べ、黒人やヒスパニック系は教育環境に恵まれないことが多い」という。教育格差の要因として貧富の差があり、それには人種問題も大きく影響していることが理解できた。
アメリカに比べると日本の教育格差問題はまだまだ改善できると感じた。人種問題もアメリカほど深刻ではない。国の予算のなかで、教育に回す金額が驚くほど少ない日本。画一的な教育ではなく飛び級や奨学金制度を拡げれば、親の所得に関係なくだれもが能力の限り才能を伸ばすことができると思う。教育への予算を日本の未来への投資と考えることはできないだろうか。

〈責任を持って報道を見る〉
最近、報道が政府寄りになってきたなと感じることがないだろうか。新聞やテレビを見ていて、そんなことが気になっていた私。アメリカでは、報道が政府とどのように距離を保っているのか。ワシントンDCにある報道博物館ニュージアムで取材した。
国連弁護士のアナさん(40)は、「報道は政府を喜ばせるようなことはない。もし政府寄りになったとしても、それは報道の自由である」と言う。また、イボンヌさんは「メディアによって報道の左右があるとはっきりと分かる。それが明確だから読者は選択が可能だ」と言っていた。「左右に関わらず読者や視聴者の好みやニーズに沿った報道をして、利益を追求するのも自由だ」と言う意見もあった。取材を通じてアメリカでは「自由」がキーワードになっていると感じた。政府寄りになっても、結果的に商業主義に走ってしまっても、すべては報道の権利に基づいている。アメリカの人たちはそれを前提として、自分の責任で報道を選ぶ自由を行使しているのではないだろうか。
今の日本では、戦前のような言論統制はもちろんない。だが、政府の圧力を避けるために、報道の方向をかえるのなら、そこに報道の自由はない。見る側、読む側である私たちも、責任をもって報道を選ぶべきなのかもしれない。

〈核ない世界へ日本が先頭に〉
世界で唯一の被爆国、日本。原爆の恐ろしさを知っているはずの私たちの国は、オーストリアが出した「核兵器禁止文書」に賛同しなかった。アメリカの核の傘に守られている遠慮からだろうが、私は日本の対応に納得がいかなかった。今年は原爆投下70年。核兵器を持つこと、使うことの意味を、アメリカの人たちはどう考えているのか聞いてみたいと思った。
取材をしてみると、核保有国であるにもかかわらず、多くの人が「原爆に絶対反対」と答えた。「原爆の被害は想像を超える。その非人道性を分かっていれば、誰も原爆投下が正しかったなんて思わないはず。」と、メトロポリタン美術館で会ったロペーズさん(26)。その声には憤りがこもっていた。一方、賛成意見の人も。報道博物館ニュージアムで会ったファレラさん(45)は、「長い目で見ると、原爆投下により多くの命を救ったと聞いているので、正しい事だったと思う」との答え。日本との歴史認識の違いの一端を見た気がした。
 原爆を落とした側にとっては、「もう終わった事。私たちには関係ない」と思っている人も多いかもしれない。でも、彼らが落とした1発の原子爆弾がどんな被害をもたらしたのか、知っておいてほしいと思った。核禁止文書に賛同できなかった日本。今こそ、傘の下から一歩踏み出し、核兵器のない平和な世界に向けて先頭に立って歩んでいくべきではないだろうか。

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