清水 千花 (上田高校2年・青木村)
ワシントン取材の初日、ドナ・エドワーズ下院議員と面会した。エドワーズ下院議員は黒人で、女性差別・人種差別の撤廃と投票権登録の推進を主な活動にしている。私は何度も驚かされた。「人種のサラダボウル」と呼ばれるこの国に、いまだ差別が残っていたのか。投票権は登録しないと得られないのか、と。
エドワーズ下院議員の部屋は、予想外にアットホームな雰囲気だった。棚の上には大きなぬいぐるみ、応接用の机上には花や置物、そして机には息子さんと思われる写真。赤いワンピースにヒールを履いてさっそうと現れた彼女は、アメリカの最前線で活躍するキャリアウーマンだった。
私は女性の地位向上のため、何をしてきたのかと尋ねた。「チャイルドケアや、男女で同じ賃金が広まるよう活動してきた」と答えてくれた。自身が大学時に経験した人種差別のことも話してくれた。彼女は「自分が自分であることが一番大切。言葉や習慣なんて関係なく、壁は克服できる」と語った。これを聞いて私は、理屈より行動を起こしてみることが大事な時があるのだな、と強く思った。
ニューヨークの2日目、「トリビュートWTCビジターセンター」と「9・11記念博物館(メモリアル・ミュージアム)」を訪れた。トリビュートWTCビジターセンターでは、犠牲になった人々の写真や探し人の張り紙、そして多くの千羽鶴を見た。ほかにもボロボロの消防服や履かれていた靴を見ながら、私は「数字上の死」ではなく「個々の人間の死」を強く感じた。
9・11記念博物館には、現場の悲惨さを物語るものが数多く展示されていた。大きく曲がったビルの鉄骨、とけた階段、柱の跡。いったいどれほどすさまじい衝撃だったのだろうか。途方もない話である。取材するチャンスを得て、近くにいたアイルランドのルーシェインさん(32)に、ここに来てどう思ったのか尋ねてみた。すると彼女は、「すごく魂に訴えかけるものがあった。残しておくというのはいいことだ」と答えてくれた。私はこれを聞いてとてもうれしかった。同じことを思っていたからである。年齢も育った環境も違う人同士でも、共有できるものはいくらでもあると希望を見出した取材であった。