市ノ瀬 椋 (飯山高校2年・飯山市)
私は黒人の音楽、ファッション、身体能力にとても憧れている。オバマ大統領も黒人で、オリンピックで活躍する黒人選手も多い。そんなすばらしい 人種がなぜ差別を受けるのか。とてもデリケートな問題だが、首都ワシントンで取材を試みた。
リンカーン記念館では、パワーズさんとデイルさんの20代女性2人に取材した。「自分たちにはあまり差別はなかったが、親にはあった。南部で差 別がひどかったため、カリフォルニアに移住した。家族の絆と神を信じて乗り越えた」と語った。
65歳のグリーンさんは「差別で仕事もまともにできず、水飲み場も別々。バスは一番後ろ。白人が来たら譲らなければいけなかった」と振り返る。 大学は行けなかったが、「自分の人種に誇りを持っている」と語った。
連邦議会議事堂では、黒人の地位向上に取り組むドナ・エドワーズ下院議員と面会。エドワーズ議員は「差別はあまりなかった。だが大学に入って寮 に住むとき、白人の学生と同じ部屋になったが、一緒に住んでくれなかった」と打ち明けた。
軍人の父と一緒に世界を旅する中でさまざまな人種と関わったといい、「自分が自分のままであることを信じ、本などを読んで差別を克服した。人と 人同士がもっと知り合うことが大事だ」と話した。
取材では、語りたくないと背を向けた人もいた。黒人差別を取材することは、それ自体が差別的な行動なのかもしれない。
その一方、取材に協力してくれた人は必ず、「自分を信じる、黒人という人種に誇りを持っている」と語った。さまざまな苦難を乗り越えたからこそ の言葉なのだろう。
そして、取材に背を向けた人たちこそ、差別の根強さを無言で語ってくれたのだと思う。
私はブラックミュージックが大好きだ。黒人発祥の音楽は、ゴスペル、ブルース、ソウル、ジャズ、R&Bなどがあるが、一番好きなのはヒップホップで俗に言うラップです。ラップが生まれたニューヨークなどで黒人の人々を取材した。
大リーグ・メッツの試合を見たシティフィールドで30代の黒人男性は「ラップはメッセージ性の強い音楽で好きだ」と話した。ドライブインで、子連れの30代のチャーリーさんは「R&Bのようなゆっくりした音楽が好きだ。ラップははやりすたりがある」。ワシントンのホテル従業員ザックさん(56)は「ジャズが好きだ」と語った。それぞれのとらえ方があった。
取材の中で、「日本のラップはアメリカと違ってルーツを知らずにやっていることが多い」という米国出身の人以外の言葉が気になった。ラップが好きな若者は「かっこいいから好き」「そのファッションが好き」などと、かっこよさをとらえている。だが、実際ラップの詞には、黒人の社会問題や自分の人生などいろいろな表現があり、テレビでは割愛されてしまうこともある。「メッセージ性が強い」と語った男性がいたが、私も黒人のいろいろな思いが込められているのではと思う。
もっと時間をかけて取材ができたら、音楽を通して会話が弾み深いコミュニケーションがとれたのではないかとは思う。ラップに限らず自分が好きな音楽について会話する時は、誰もが笑顔になる。取材に応じてくれた人の中で、ラップが嫌いな人はいなかった。みんな良い表情だった。好きな音楽を米国で取材できたことはすばらしい経験だった。ブラックミュージックを生み出した思いやラップに込められたメッセージ。ただかっこいいだけでなく黒人が生んだ歴史だと思えた。