一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

宮沢 小春 (長野高校 高1・長野市)

NEWSEUMとジャーナリズムの神髄

 NEWSEUMはワシントンDCにあるニュースとジャーナリズムの博物館だ。その日の世界中の新聞約80紙が展示されていて、現在の世界で何がどのように報道されているかが分かる。
また、16世紀から現代までの歴史的事件を伝えた新聞の紙面や報道写真も展示されており、日本に関係した出来事では、真珠湾攻撃、原爆投下、東日本大震災などを伝える新聞があった。
ニュージアムにある9・11の展示.JPGニュージアムにある9・11の展示1990年のベルリンの壁の崩壊や2001年の米中枢同時テロなどのコーナーや、ジャーナリストの役割を伝える4D映画もあり、出来事を同時代の人に知らせるだけでなく、後世の人に伝えることもジャーナリズムの大きな役割だと感じた。
このニュージアムの印象を、見学をしていた母子にインタビューした。
母親のカレス=スレッドギルさん(47)は、「メディアが歴史をどのようにして変えたか知ってほしい。今日見て知ったことを忘れないでほしい」と語った。次男のエリック君(10)は、「すごい。情報量が多く、とても収穫があった」と答えてくれた。ニュージアムでインタビュー.JPGニュージアムでインタビュー
エリック君は、科学技術やゲームに興味があるようで、将来の夢として建築家、宇宙飛行士、発明家をあげてくれた。そんなエリック君はスミソニアン博物館はじめ、他にもいくつか博物館を見学してきたという。
スミソニアン博物館は入館料が無料だ。スミソニアンだけでなく、ワシントンDC内の博物館のほとんどは無料で見学ができる。しかし、このNEWSUMは入館料がおよそ20ドル。なぜわざわざお金を払ってまで来たのだろうか。カレスさんに聞いてみると、「確かに有料ではあるけれど、お金を払う価値がある」と答えてくれた。
NEWSEUMには、報道中に亡くなったジャーナリストの顔写真が壁一面に敷かれていた。命をかけて報道した人々を大切に扱う、その姿勢がジャーナリズムの真髄だと感じさせられた。 
報道中に亡くなったジャーナリストの顔写真.jpg報道中に亡くなったジャーナリストの顔写真




国立アメリカ歴史博物館と独立の精神

国立アメリカ博物館にある大統領夫人のドレス.jpg国立アメリカ歴史博物館にある人のドレス ワシントンDCの2日目には国立アメリカ歴史博物館を取材した。ここではアメリカの歴史に対して事件、人物、物品の3面からアプローチされていた。建国の歴史や世界大戦、黒人解放運動など、日本でも親しみのあるテーマが詳しく説明されていたほか、戦時中の絵本や歴代大統領夫人のドレスなども展示されていた。
一番印象に残ったのは、暗室に厳重に保管されたボロボロの星条旗だった。これは巨大なもので、横12m縦9mもあった。第二次英米戦争中の1814年、ボルティモアの戦いで、マクヘンリー砦の米兵たちが、イギリス海軍との一昼夜に及ぶ激しい戦闘のさなかに掲げたものだ。翌朝船上からその星条旗を見たフランシス・スコット・キー弁護士が詩を書いた。これがのちにアメリカ国歌となった。現地でお世話になったガイドさんから、同じDCにある公文書館には独立宣言の現物が残されているが、ミサイル攻撃にも耐えることができるよう厳重に保管されているとお聞きした。
今回の派遣であらためて驚いたのは、アメリカの国家財産のほとんどはまだ新しく、せいぜい過去250年ぐらいの時代のものだということだ。アメリカは言語や歴史を異にする様々な移民集団が作った新しい国だ。だから、そのアイデンティティーは、独立のために一緒に戦ってきたぞという精神の上に築かれるのだろう。一方、日本では、土器や土偶のように古ければ古いものほど歴史的価値が高いとされている。文化の違いを感じた。
ジョージア州から3人の子供と来館していた母親にインタビューした。「子供によい博物館だとネットで知り、はじめて訪問した。子供たちがここで吸収した知識は、将来役に立つ」との話だった。2組の親子と話をして気がついたのは、どうやらアメリカ人にとって、この博物館の展示物は過去の遺物などではなく、将来の世代へと伝えていきたい財産であるらしいということだ。アメリカ人の親が子供たちをこの博物館に連れてくるのは、子供たちにアメリカの精神―ともに独立を勝ち取ったぞという意識―を伝えていきたいという気持ちからであるようだ。