中島 瑞穗 (長野高1年・長野市)
エノラ・ゲイを見て
アメリカ最初の訪問先は国立航空宇宙博物館別館だった。
ここには世界各国から数多くの飛行機や戦闘機などが集まり、保管されている。その中にB―29爆撃機エノラ・ゲイがある。太平洋戦争末期、広島に原子爆弾を投下したことで有名な爆撃機も、今では多くの明かりでその銀色のボディーを輝かせて展示されていた。説明には「第2次世界大戦末期に日本の広島に原子爆弾を投下した。」と、とても単純に書かれていた。日本が大きな被害を受けたことは何一つ書かれていなかったのだ。
そこで、アメリカ人としてはこのエノラ・ゲイや原子爆弾についてどう思うのか、実際に聞いてみた。答えて頂いたのはアイダホ州在住のローレン・レイモンドさん(63)だ。「この戦闘機が落とした原子爆弾で日本人が多く死んだのは悲しい。しかし、自分としては日本の支配者は中国人やフィリピン人、米兵捕虜にひどいことをした。それを止めるためにこの原子爆弾は必要だった。もしこの原子爆弾を使わないともっと多くの人を殺してしまうことになる。」と、話していた。私はこれを聞き、とても驚いた。ローランドさんは『日本の支配者』といい、『日本人』や『日本兵』とは言わなかったのだ。アメリカ兵などに実際に危害を与えていたのは日本兵や日本人だ。しかしローランドさんは実際に危害を加えた日本兵よりも、上の方で指示を出していた支配者を悪く思っていたのだ。アメリカ人は日本兵すべてを悪く思っていると私は思っていたのだが、ローレンさんのおっしゃったことで私の思っていたことは180度変わったようだった。
また、ローレンさんは日本人である私にもご自身の考えを話してくださった。自分の考えを堂々と、誰にでも言えることは大事ということを改めて感じさせられた。
このインタビューを通して、人の話を正確に聞き取ることの難しさを身にしみて実感した。逆に、人の話を正確に聞き取ることのおもしろさも実感できる貴重な体験となった。
オバマ選挙事務所を訪れて
アメリカ2日目に訪れたオバマ選挙事務所では、オバマ氏を次の選挙で再選させることを最大の目的としている。この大きな目的を果たすために、主に2つの方法を使って大統領を選ぶ『選挙人』と言われる人を多く得ようとしている。2つの方法とは、個人宅に電話をして、どちらを支持しているかを聞く電話調査と、直接個人宅に行って電話の場合と同様にどちらを支持しているかを聞く個別訪問だ。
この事務所では、ボランティア全員が電話でも個別訪問でも気をつけていることがある。それは「オバマ氏に投票してください。」とは直接言わないことだ。
ではどのようにしてオバマ氏の支持者を増やしているのだろうか。この事務所の地域マネージャーをしているパーカー・ラムズデルさんから電話や個別訪問した先の家を次のように分けていると教えて頂いた。①オバマ氏を強く支持している。②オバマ氏に傾いている。③どちらにも決めていない。④ロムニー氏に傾いている。⑤ロムニー氏を強く支持している。この5つのどれがその家に当てはまるかを調べ、特に③の家が①や②に近づくように活動している。事務所の方々はたとえ相手がオバマ氏を反対している人でも、会話の中で自分との共通点を見つけ、そこから本題に入るというやり方で『いいコミュニケーション』を目指している。
今回、選挙事務所の訪問で、私は電話調査をすることに挑戦した。私は3軒の家に電話をしたが1軒は不在でつながらず、2軒はつながったが話をしたい本人は不在で電話調査はできなかった。電話を通すと英語が聞き取りにくくなり、本人がいるのか聞くだけでもとても時間がかかってしまった。今回は英語での電話調査はできなかったが、英語でコミュニケーションをとるという貴重な経験をすることができ、とても感動した。同時にもっと英語を普通に使えるようになりたいと思った。
電話質問のサンプル
My name is Mizuho Nakajima. I'm calling from Obama campaign.
Is ○○(住人の名前) there?
May I ask a quick question, please?
Do you plan to vote for Obama this election?
あとは会話から
1 strongly support Obama
2 leaning to Obama
3 undecided
4 leaning Romney
5 strongly support Romney
を判断します。
フィラデルフィアを尋ねて
アメリカ4日目はアメリカ発祥の地とも言われるフィラデルフィアに行った。人口145万人でアメリカでは6番目に大きく、ペンシルベニア州では最大の都市だ。町の4分の1は歴史保存地区となっている。アメリカ発祥と言われるだけに、アメリカ初の大学や証券取引所、動物園もある。ワシントン市に首都を移す準備段階として、1790年から1800年までの10年間に臨時の首都にもなっている。
歴史としてはとても重要なこの町には古い建物が数多くある。中でも多くの家は地下部分を持ち、倉庫と台所となっている。これは地下で調理に使った熱を上に上げて暖房に使うという、寒いこの町にはもってこいのしくみなのだという。このため歴史保存地区の多くの家の前には、地下に入る入り口があるというつくりになっている。歴史保存地区の建物の多くは今でも人が住み、大切に使われている。
さて、日本でもアメリカでも落書きというものはいつでも問題視されている。フィラデルフィアの一部の建物には壁一面にすきまなく絵が描かれている。大きすぎる落書きではないだろうか、と心配してしまうのだが、実は大きな1枚の絵なのだ。既に絵があるので落書きはできないというわけだ。古い家を大切にして、さらに落書きからも建物を守る。私は実にアメリらしい発想だと思ったが、建物大切に思う気持ちの表れなのだろう。日本も古い建物が多くある。そういった建物を長く大切に使っていかなければいけないと強く実感した。