一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

上島 あや菜(伊那北高2年・辰野町)

LinkIcon前へ‥‥次へLinkIcon

<原爆への認識 世代間で変化>

 目の前に現れた銀色の機体は静かに重々しい雰囲気を放っていた。74年前、広島に原子爆弾を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」の実機だ。機体を前にして、私は言葉を失った。
 ワシントンDCの国立航空宇宙博物館別館に置かれた機体の前には原爆がもたらした被害についての説明は一切なく、疑問に思った。そんな機体を見つめる人たちに取材をした。
 「アメリカが日本に原子爆弾を落としたことについてどう思いますか?」。ワシントンDC在住のビルさん(75)は「戦争を終わらせるためには必要なことだった」と答えた。米国で10人余に同じ質問をしたが、半数以上は原爆投下に対して肯定的だった。唯一の被爆国である日本の国民として、悲しさとやるせない気持ちでいっぱいになった。でも、「戦争を終わらせるため」といわれると反論しきれない自分もいた。そんな自分に少し悔しさを覚えた。
 予想外の答えもあった。父娘でミシガン州から同館を訪れたジェームズさん(49)は「戦争学習をした中学生時代は冷戦中だった。原爆投下は仕方がないことだと習った」と答えた。しかし、娘の高校生ザラさん(13)は「学校で原爆投下はひどいことと教わった」という。教育によって、世代間の原爆に対する認識が変わっていくことを知った。
 今回取材に応じてくれた全員が「戦争は良くない」と答えた。平和を求める姿勢に国や文化の違いは関係ない。終戦から74年がたち、戦争を知る人が少なくなる今、若者から大人まで全員が、平和とは何かを改めて自分に問いかける必要があるのではないか。
 今秋、私は学校の研修旅行で初めて広島を訪れる。この目でエノラ・ゲイを見て、意見を聞いた後、広島で何を考え、何を感じるのか。一つの視点にとらわれず、さまざまな観点から戦争と平和の在り方について熟考し、自分なりの答えを見つけたい。


<男女平等目指し意識変化を>

 日本では女性差別や男女格差が問題になっている。
世界経済フォーラムが発表した2018年版男女格差報告では、日本は149カ国中110位、G7の中では最下位だった。そこで、アメリカ国内の男女格差や平等についての意見を聞き、どうすれば日本で男女平等社会を実現できるか考えた。
 女性5人、男性3人に取材した。ほとんどの人が女性への家事の強要があると答え、就職などで男女差別を受けたり、差別を見たりしたことがあると教えてくれた。回答者全員が男女差別を無くすために、デモへの参加、誰かへの相談、訴訟を起こすなどの行動(action)を起こしたことがあるとも言っていた。これらの行動力はとても素晴らしいと思った。
 ニューヨークのエリス島を観光で訪れていたミズーリ州出身の女性は「女性差別は気にならない」と答えた。私が驚いて話を聞き続けると、彼女はキリスト教の信者であることが分かった。そして「私の信仰では、女性は男性に従うべきであり、同性愛も認められない」と言っていた。
 男女差別は解決すべき問題であるが、宗教的価値観も尊重しなくてはならない。差別が一筋縄では無くならない理由の一つを知った。
 お互いの価値を尊重しあい、行動を起こすこと。時代が変わるのを待っていては遅い。男女平等の社会を達成するために、まずは身の回りから意識を変えていきたい。

LinkIcon前へ‥‥次へLinkIcon