一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

松倉 遼佑(松本深志高2年・諏訪市)

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<「エノラ・ゲイは英雄」思い複雑>

 原爆投下に対する日米の認識の違いを取材した。未来を担う若者が、戦争について多くのことを知り、学び、考え、次世代へ伝えていくことが何より重要だと実感した。
 中学2年生のとき、平和学習で広島県を訪れた。被爆者の話を聞き、原爆ドームや平和記念資料館を見学。あまりの悲惨さに言葉が出なかったのを今でもよく覚えている。
 今回は国立航空宇宙博物館別館で、広島に原爆を落としたB29爆撃機「エノラ・ゲイ」を見た。銀色の機体に刻まれた「ENOLA GAY」の文字。機体を見ていたアメリカ人に「原爆投下について、正直な思いを教えてください」と質問した。
 多くの人が「日本では多くの人が犠牲になったから、とても悪いことだ。でも、原爆投下があったから戦争が終わり、たくさんの命が救われた」と答えた。「原爆を投下したエノラ・ゲイはアメリカにとって偉大なヒーローだ」。オハイオ州のスコットさん(63)の言葉を聞いて、とても複雑な気持ちだった。
 同世代交流会で出会ったレオ君(14)とサム君(15)は「原爆投下で太平洋戦争が終わった。だからエノラ・ゲイのパイロットは英雄だ」と習ったという。アメリカでも多くの中学校高校では、彼らが受けたような授業は少なくなっているそうだ。だが、実際にそう学んだ若者がいるということを知った。
 戦争に限らず、何かを「した」側と「された」側では、物の見方は180度違う。だから伝え方が変わってしまうことは仕方がないかもしれない。しかし、74年前に何があったかを知ることは非常に大切だ。戦争の記憶を語れる世代が少なくなってきている今だからこそ、若者がその声を聞く機会に積極的に参加するべきだと思う。


<音楽の力 世界を変えられる>

 今回の滞在で強く感じたのは、「英語はコミュニケーションツールなのだ」ということである。取材では相手の英語がうまく聞き取れなかったり、相手に自分の英語が通じなかったりしたことが何回もあった。しかし、聞き取れなかったら「ワンモアプリーズ」と言って聞き直し、自分が知りうる限りの英語で伝えで、とりあえずガムシャラに相手とコミュニケーションを取った。うまくいかない場合もあったが、何回かやっていくうちに、なんとなくコツをつかんでいった。そして聞き取れたり、伝わったりすると、自分も相手も「Oh!〇〇!」とうれしくなる。あの感覚が忘れられない。
 ニューヨーク日本総領事公邸では、ジャズピアニスト・作編曲家の宮嶋みぎわさんの話を聞いた。実感したのは「世界共通の言語は音楽である」ということだ。僕は今、吹奏楽部に所属しており、日々吹奏楽漬けの日々を送っている。正直、音楽をやるのがつらい時期はあった。でも最近は音楽が持つ、とてつもない力を感じている。
 言葉が通じなくても、相手と分かり合えなくても、音楽は大昔からずっと人類に寄り添ってきた。今、世界中で起きている問題が音楽で解決するならば最高だろう。でも残念ながら、そうはいかない。だからせめて、世界中の皆さんにこれだけはお願いしたい。音楽を聴いたり、演奏したりする時くらいは、誰かを憎んだり、恨んだりせず、純粋に音楽を楽しんでほしい。音楽はきっと世界を変えられる。
 宮嶋さん、ニューヨーク日本総領事の山野内勘二総領事・大使、共同通信の永田正敏ニューヨーク支局長が演奏してくださったジョン・レノンのイマジン。あの音楽は、僕の心の中に今も残っている。
 この夏のアメリカ訪問は、人生のターニングポイントになったと思う。今まで持っていた価値観も考え方も良い意味でぶち壊された。たくさんのコトを知った。たくさんのモノに触れた。たくさんのヒトと話した。すべてが貴重な思い出である。一緒にアメリカに行った仲間たちとの出会いは何よりの宝物だ。あの1週間の経験を必ず次に生かす。「世界は自分の知らないコト・モノ・ヒトでできている」。これを胸におき、おごらず、焦らず、自分のペースで考え続け挑み続ける。1週間本当に楽しかった!

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