一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

伊東 かなえ  (上田高2年・上田市)

9.11の話を聞いて

 トリビュートWTCビジターセンターで見た写真のなかで、強く印象に残っているものがある。航空機の激突直後の世界貿易センタービル内部の階段で撮影されたものだ。それは、多くの人々が階下に逃げていく脇を、一人の消防士の男性が救助のために駆け上がっていく写真である。「このビルはすぐに崩壊したんじゃなかったっけ…。この男性はどうなったんだろう」という思いが頭の中を駆けめぐった。彼の、命がけで救助にあたる消防士としての使命感を感じると同時に、自然に涙が出てきた。
DSC_0940.JPG 当時消防士として働いたブレンダ・バーグマンさんにお話しを伺った。彼女はこの事故のことを「悪夢よりもひどかった」と語った。「この事故が風化していると感じるか」と尋ねたところ、深く頷き「アメリカの人は過去のことは振り返らず、明日のことばかり見ている。過去から学ぶことはたくさんある。」と答えた。
 だからこそブレンダさんはこの日の出来事を風化させないためにボランティアとして語り継ぐ活動をしているのだろう。同じような悪夢が二度と起こらないようにするために9.11を知らない世代である私たちにも辛い記憶を話してくださった。このメモリアルに展示されている犠牲者の生きていた頃の写真や遺品からは「写真では笑顔で写っているのに、搭乗券は残っているのに、この人達はもういないんだ」と悲しくなり、こんな悪夢はもう起きてほしくないと思った。
 同じ事は日本の東日本大震災についても言えるのではないかと感じた。この震災も、時間が経てば知らない世代が生まれてくるし、私たちの心の中でも風化は進むだろう。思い出すことで辛い思いをする人には、忘れていくことも必要だと思う。しかし同じ悲しみを二度と繰り返さないために、当時の出来事を語ったり目に見える形で残したりこと、また、それを目にして過去も振り返り、語り継ぐのが同じ日本人としての私たちの役目だ。

オバマ事務所の仕事

DSC_0522.JPG バージニア州Fair Faxにあるバラク・オバマ候補の選挙事務所では、field organizerのParker Ramsdellさんを筆頭に15人ほどのスタッフが、今年の大統領選でのオバマ氏再選を目指して主に三つの選挙活動をしている。
一つは、新たな得票を集めるために有権者として登録するための用紙を配布することだ。アメリカでは18歳で選挙権が与えられるが、自分で有権者として登録しなければならない。しかし現在、若者やヒスパニックを中心に登録しない人が増えている。そこで、スタッフは街中の飲食店やバス停、大学の構内などで登録用紙を配布し、有権者として登録してもらう活動をしている。
二つ目は電話によるアンケート調査である。これは、有権者がどの程度オバマ氏または対立候補のロムニー氏を支持しているかを五段階で集計するためである。現在両者の支持者はほぼ同数とみられるので、まだどちらかに決めかねている有権者に今後どれだけオバマ氏を支持してもらうかがオバマ氏再選の鍵である。
そして三つ目は、キャンバシングと呼ばれる自宅の戸別訪問である。これはスタッフが一日に数百軒の家を訪問し、有権者との直接的なコミュニケーションによってオバマ氏の政策をアピールする活動である。しかしキャンバシングでは、直接「オバマに投票して下さい」とは言わない。その有権者との共通な話題を見つけ、相手との「橋」を作る。オバマ氏の批判であってDSC_0514.JPGも聞き入れ、その批判に立脚した政策をアピールする。心からの会話で有権者の心をつかむのだ。同事務所でボランティアとして働く明治大学の海野素央教授は「相手を動かしたいなら、相手との共通点を見出し、感情移入することが必要だ」と話す。
 今回の選挙事務所の見学を通して、日本の選挙運動はある意味受け身であるように感じた。日本の候補者は街頭演説や選挙カーから一方的に政策をアピールする選挙活動を行っている。また、電話による選挙活動でも候補者への投票を呼びかけるのが中心である。つまり有権者の声を聞くというより「政策について有権者に聴いてもらい、投票してもらうのを待っている」状態である。それでは、候補者と自分の間に接点を見いだせない有権者は候補者に関心を持たずに終わってしまう人もいる。そこに日本の若者の選挙離れの一因があるのではないだろうか。
オバマ事務所は、ある一日で約四千人、今年一月から現在までで約六万人の新たな有権者に登録してもらうという成果を上げたという。この選挙活動のやり方はこの事務所独自だが、今後日本でも公職選挙法などによる制限はあるとしても、コミュニケーションを基盤とした、有権者の声を聞く選挙活動が必要ではないだろうか。