一般社団法人 長野県新聞販売従業員共済厚生会

取材報告

青木 至人  (北御牧中2年・東御市)

「アメリカにとっての広島」

アメリカに降りたって最初の取材が、広島に原爆を投下した爆撃機エノラゲイであったことに心が引き締まりました。ダレス空港に隣接する国立航空宇宙博物館別館は、ライト兄弟の飛行機から、コンコルド、スペースシャトルまで、憧れの航空機が並ぶ博物館です。
 しかし、実際に訪れてみると、そんな華やかなイメージとは、少し、違っていました。
展示されている日本の飛行機の技術力の高さは、誇らしくもありましたが、戦闘機の展示の多さには、とても胸が痛みました。空を自由に飛びたいという人間の夢は、戦争によってかなえられてきたのだという現実を目の当たりにしたからです。
 エノラゲイは、ぴかぴかに磨かれ、原爆に関する何の説明もなく、ただ置かれていました。何だか、悔しく悲しい気持ちになりました。僕たちは、その場にいたアメリカ人に、「原爆を投下したエノラゲイを展示してあることをどう思うか。」と質問しました。答えは、「(原爆は)歴史上で、一番悲しい出来事で、人が人を破壊する行為をどう行ったかがわかるので、展示はいいことだと思う」というものでした。アメリカでは、「原爆は、戦争を早く終わらせるために必要だった」と正当化するようにいわれ、最近では、「原爆開発計画マンハッタンプロジェクトにお金をかけたので、こんなに強かったのだと示したかったのではないか」という意見もあるとのことでした。
僕は、どんな理由があっても、戦争は正当化されないし、エノラゲイを展示するならば、そこに広島、長崎の原爆の悲惨さについても並べて展示するべきだと思いました。
どんなに進んだ科学でも、その使い方を誤ってはならないと痛感し、科学の力の持つ光と影の両面を見なくてはならないと感じました。そして僕自身が、まず広島、長崎を訪れて、こんなとき、世界の人々にそれを伝えられるようになりたいと思いました。

スミソニアンの骨部屋へ

20120801_034 (1)_2_1.JPG映画「ナイトミュージアム2」の舞台にもなったスミソニアン国立自然史博物館は、世界中の子どもやナチュラリストが一度は訪れたいと憧れる存在だ。中でも、僕のお目当ては、スミソニアンの骨部屋。僕は、野生動物の骨の研究をしているからだ。

20120801_110_4_1.JPGスミソニアンの骨部屋で、まず出迎えてくれたのはカモノハシの骨格標本。特徴的なくちばしとその黒い色に驚いた。そして、恐竜たちと同じ時代を生き抜いた哺乳類。日本では企画展でしか見られないようなバイソンやジャッカル。中でも僕が一番感動したのは、初めて見た甲羅の骨格のないオサガメだ。また、ヒトの骨格展示が常設でたくさんあることに日本との違いを感じた。

20120801_064 (1)_4_1.JPG スミソニアン自然史博物館には、恐竜から、絶滅した大型哺乳類、現代の生き物まで、地球上に存在してきたあらゆる命が詰まっている。中でも、骨は、さまざまな地球環境に適応しながら進化してきた、生命の歴史そのものだ。いつか、ここで研究をしてみたいと思った。

 「世界の中の一員であることを実感」 

世界各国の国旗が並ぶ国連本部。入館には、当然、厳しいセキュリティーチェックがありました。ニュースや教科書で見る本会議場へ足を踏み入れる時は、緊張しました。
世界中の国々が、平和と安全のために話し合いを行い、紛争や貧困など、困難な生活を強いられている国々への支援や対策、平和的な解決を考え実行している場所です。ここでは、国連の仕事や安全保障理事国の構成、戦争を回避するための和平交渉、制裁措置、PKOなどの、紛争を解決するための3段階の介入基準などについて学びました。
僕たちが訪れた日は、ちょうど、シリア情勢について、話し合いが行われている真っ最中とのことでした。まさに、ここで世界が動いている、という瞬間を肌で感じました。世界各地で起こっている出来事が、テレビや新聞の中の出来事ではなく、現実として、僕の周りに渦巻き、今このときも同じ空の下で起こっているのだという思いになりました。
建物内には、世界各国から集まった人たちに、戦争による地雷の被害、長崎の原爆で被爆した石像、途上国の子どもたちの現状なども紹介されていて、平和のため、困難のある国々のために、訪れた全ての人が、それぞれの立場で、今何ができるかを考えさせられるのではないかと思いました。
僕自身も、ここに来て、自分もまた世界の一員であることを実感しました。広大で豊かなアメリカだけではなく、その対極にある国々の現状や様々な民族の暮らしを学び、自分にできることは何かを、考えなくてはならないと思いました。